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2026/6/29

コラム

経営管理ビザの厳格化はなぜ起きた?資本金3,000万円・常勤職員義務化の新基準を解説

在留資格「経営・管理」(経営管理ビザ)は、2025年10月16日施行の上陸基準省令改正により、許可基準が大幅に厳格化されました。施行から半年以上が経過した現在も、既存ビザ保持者の更新対応や新規申請の実務において影響が続いている重要な制度変更です。

改正前と改正後の比較

最大の変更点は、事業規模要件の引き上げです。

  • 資本金等の額:500万円以上 → 3,000万円以上(個人事業主は事業に投下した総額で判断)

  • 常勤職員の雇用:従来は資本金500万円以上「または」常勤職員2名以上のいずれかでよかったところ、改正後は3,000万円以上「かつ」常勤職員1名以上の雇用が必須に変わりました。選択制が廃止され、両方を満たす必要があります。

ここで雇用企業が特に注意すべき点があります。常勤職員としてカウントされるのは、日本人、永住者、日本人の配偶者等、特別永住者など身分系の在留資格を持つ人材に限られます。技術・人文知識・国際業務(技人国)や特定技能などの就労系ビザで働く外国人は、何人フルタイムで雇用していても常勤職員の人数には含まれません。

加えて、改正前は明示されていなかった経営者本人の経歴要件も新設されました。次のいずれかに該当することが必要です。

  • 経営・管理の実務経験が3年以上

  • 経営管理に関する博士・修士・専門職の学位

  • 行う事業に関連する博士・修士・専門職の学位

日本語能力についても新たな要件が加わり、申請者本人または常勤職員のいずれかが、JLPT N2相当(CEFR B2目安)以上の水準を満たす必要があります。日本の大学等の卒業者や日本に長期間在留している者なども、この要件を満たすとされています。

事業計画書についても、改正後は中小企業診断士・公認会計士・税理士など専門家の確認を受けたものの提出が義務付けられました。さらに2026年4月15日以降の申請では、一定のカテゴリーに該当し申請人が事業の管理に従事する場合、所属機関の代表者に関する申告書の提出も求められるようになっています。

既存ビザ保持者への経過措置

すでに経営管理ビザを保有している場合、施行日(2025年10月16日)から3年間、つまり2028年10月16日までは経過措置が設けられています。この間は新基準を満たさないことのみを理由に、在留期間更新許可申請が不許可になることはないとされています。ただし「自動更新」ではなく、経営状況が良好であること、納税義務を適切に履行していること、次回更新までに新基準を満たす見込みがあることなどを踏まえた総合判断が行われます。労働基準法や社会保険・雇用保険等の遵守状況に問題がある場合は、経過措置期間中であっても更新が認められない可能性がある点にも留意が必要です。

考察

今回の厳格化の背景には、移住目的での経営管理ビザの悪用や、実体のないペーパーカンパニーによる取得が増加していたという問題があります。資本金だけを口座に用意し、実際の事業活動を行わない名義貸し的な申請が、制度の信頼性を損なっていたという指摘が、政府・与党内の議論を経て今回の改正につながりました。

実務上、最も注意すべきは「資金の真正性」の立証だと考えています。3,000万円という金額は、単に口座に存在することを示すだけでは足りません。資金がどのように形成され、どのような経路で会社に払い込まれたのかを、資金形成・送金・払込・入金という時系列の流れとして、通帳や送金記録に基づき一貫して説明できる必要があります。出所の説明に矛盾があれば「見せ金」を疑われ、不許可につながりやすくなります。

企業の人事・経営企画担当者の視点では、今回の改正は「外国人経営者を雇い入れる」場面と「外国人に経営管理ビザで子会社・支店を任せる」場面の両方に影響します。特に常勤職員の雇用義務において、技人国ビザの社員は人数に数えられないという点は誤解されやすく、雇用計画の前提を見直す必要がある企業も少なくないでしょう。

もう一点指摘しておきたいのは、経過措置の「3年」を漫然と待つことのリスクです。経過措置はあくまで「新基準未達のみを理由とする不許可」を当面回避する措置であり、納税状況や労務コンプライアンスなど他の要素に問題があれば更新が認められないケースもあります。2028年10月16日が近づくにつれて、資本金の積み増しや常勤職員の確保には相応の準備期間(増資、利益の内部留保、採用活動など)が必要になるため、経過措置期間中であっても早期に対応計画を立てておくことを強くお勧めします。

経営管理ビザは、技人国ビザなどの就労ビザとは異なり、「事業の実体」そのものが審査対象になる点が大きな特徴です。形式を整えるだけの申請では通らない時代に入った今、立証資料の構築力を持つ専門家のサポートの重要性は、これまで以上に高まっていると感じています。

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